東京高等裁判所 昭和57年(行ケ)182号 判決
一 原告主張の請求の原因一ないし三の各事実(特許庁における手続の経緯、本願発明の要旨及び審決の理由の要点)については、当事者間に争いがない。
二 そこで、審決取消事由の存否について検討する。
1 各引用例の記載事項の誤認の主張について
(一) 第一引用例に関する主張(取消事由<1>)について
(1) 原告は、第一引用例には変調された高周波搬送信号を「受信するための入力回路」は開示されていない旨主張する。
しかしながら、成立に争いのない甲第四号証によれば、第一引用例においてラジオ受信機、テレビジヨン受信機等の中間周波増幅回路であるAの第一段のトランジスT1のベースに接続された端子は、右増幅回路Aの入力端子であること及び右増幅回路Aは、中間周波信号を増幅するものである(一頁右欄三ないし五行参照)ことが認められるところ、右各事実によれば、右増幅回路Aには、右入力端子を介して中間周波信号が入力することは明らかであり、したがつて、この入力端子は、中間周波信号を受信して右増幅回路Aに入力させるものであるから、中間周波信号を「受信するための入力回路」ということができる。なお、仮に、右入力端子が、単に「端子」であつて、これを「回路」とみるのが相当でないとしても、この入力端子には、当然に、中間周波信号を受信してこれを右入力端子を介して右増幅回路Aに供給するための回路が接続されていなければならないものであるところ、この回路は、中間周波信号を「受信するための入力回路」にほかならない。
ところで、成立に争いのない甲第三号証の記載特にその第5図及び「第5図はこの発明による信号処理装置を実施したテレビジヨン受信装置の音声チヤンネル内の三トランジスタ増幅段を多数使用したものを示す。点線で示した区画60はFM(周波数変調)波の信号源に結合する一対の接続端子62及び64を有する。区画60は1.27mm×1.27mm程度またはそれ以下の大きさのチツプ(部片)である。テレビジヨン受信装置の映像増幅装置中の映像検波回路から出力される映像信号に含まれているような適当な供給源からのFM信号が端子66に供給され、また蓄電器68を経て、テレビジヨン信号の映像搬送波及び音声搬送波の四・五MC/Sの中間搬送ビートに同調する同調回路70に結合される。この例では同調回路70及び結合蓄電器68はチツプ60の外に在り、接続端子62及び64をもつてチツプに結合されている。この発明は放送FM受信機に直ちに適用されることは注目すべきである。」との記載(7欄末行ないし8欄一七行)によれば、本願発明の明細書の発明の詳細な説明には、実施例として、第一の信号増幅回路に、映像検波回路から出力される映像信号に含まれているFM信号すなわち周波数変調された音声搬送波が、同調回路70により分離されて四・五MHzの音声中間周波信号として供給されるもので、この中間周波信号には周波数変調された音声信号を含むものが示されていることが認められ、これを前記本願発明の要旨と対比すれば、本願発明においては、右の実施例における中間周波信号を「搬送信号よりも低い周波数のベースバンド信号で変調された高周波搬送信号」と称しているものであることは明らかであるところ、第一引用例における前記中間周波信号は、ラジオ受信機、テレビジヨン受信機におけるものであるから、本願発明の右実施例(テレビジヨン受信装置の音声チヤンネル内の増幅回路)における中間周波信号に相当するものであり、したがつて、本願発明における右高周波搬送信号にあたるというべきものである。
以上のとおりであるから、入力端子そのものを「受信するための入力回路」とみても、或いは右入力端子には当然に「受信するための入力回路」が接続されるとみても、いずれにしても、第一引用例には、「搬送信号よりも低い周波数のベースバンド信号で変調された高周波搬送信号を受信するための入力回路」が開示されているということができ、したがつて、原告の右主張は理由がない。
(2) 原告は、また、「復調回路の出力に直流結合された第二の増幅回路」も第一引用例に開示されていない旨主張するところ、前記甲第四号証によれば、第一引用例においては、ブロツクで表わされた低周波増幅回路Bが、単に直線によつて検波用出力端子Pに接続されていることは認められるが、これだけでは、右出力端子Pに低周波増幅回路Bが直流的に結合されているのか否かは明らかでない。
ところで、原告は、甲第七ないし甲第一二号証を示して、具体的に表わされた回路の出力とブロツクで表わされた回路との間が単純に直線で結ばれて図示されていても、両回路が交流結合している場合も多く、直線で結ばれているからといつて直ちに直流結合しているとは解されない旨主張し、被告は、乙第二号証を示して、交流結合の場合には具体的回路とブロツクとの間にコンデンサのマークが付されるものであるから、コンデンサのマークの付されていない第一引用例の場合は直流結合である旨主張するので、この点について検討する。
まず、成立に争いのない甲第八号証によれば、同号証の図一・四はブロツク線図を、また図四・一は具体的回路を示したもので、いずれも具体的回路とブロツクとが混在したものではないことが認められ、また、成立に争いのない甲第九号証によれば、同号証中の原告指摘にかかる第二・一図、第二・一〇図、第二・一一図及び第二・一三図も、いずれも具体的回路とブロツクとが混在したものではないことが認められるから、右甲第八、九号証は第一引用例の記載事項を判断するための資料とすることはできず、さらに、成立に争いのない甲第一〇号証によれば、同号証に記載されたものはスイツチングレギユレータに関するものであると認められるから、これを中間周波信号を増幅検波する回路に関する第一引用例の記載事項の判断するについて参酌することはできない。
つぎに、成立に争いのない甲第一一号証によれば、同号証の図三・三では具体的回路で示される音量調節器とブロツクで示される増幅器とは単に直線で接続されているのに対し、具体的回路のみを示す図三・一三では、右の音量調節器と増幅器の間には、コンデンサが介装されていることが認められ、また、成立に争いのない甲第一二号証によれば、同号証の第一〇図において、具体的回路で示される増幅器24Aには、トランジスタ63のエミツタとの間にコンデンサが介装されているが、これと同様に構成されるブロツクで示された増幅回路24Bについてはトランジスタ63のコレクタとの間にコンデンサが介装するようには記載されていない(四頁8欄七ないし一〇行)ことが認められる。したがつて、右甲第一一、一二号証によれば、原告主張のとおり、具体的回路とブロツクとの間が単に直線で接続されていても必ずしも直流結合を示していると断定することはできないものといわなければならない。
一方、成立に争いのない乙第二号証によれば、同号証の第一六・六図においては具体的回路とブロツクとの間にコンデンサが介装されており、また、ブロツクだけで示される第一六・一八図においては、ブロツク間がコンデンサを介して接続されていて、これが交流結合を示しているものと認められ、具体的回路とブロツクとの間が交流結合されている場合には、コンデンサを図示して交流結合であることを表わすことが行われているということができる。
そして、成立に争いのない甲第五号証によれば、第二引用例には、復調回路とその出力に接続された増幅回路とが直流結合されたものが記載されていることが認められるから、第一引用例の場合も、検波出力端子Pと低周波増幅回路とが直流結合されているとみても、これを直ちに誤りとするのは相当でない。
以上のとおりであるから、審決には第一引用例の記載事項について結論に影響を及ぼすべき誤認はないというべきである。
(二) 第二引用例に関する主張(取消事由<2>)について
(1) 原告は、第二引用例の第五図には、任意適当な振幅変調交流信号源34の信号を「受信するための入力回路」については明示されていない旨主張するので、この点について検討する。
前記甲第五号証の記載特にその5欄六四行ないし6欄二行(訳文九頁七ないし一七行)の記載によれば、第二引用例の第五図の実線で示されるマルチデバイス回路の整流器15´の両端に、点線で示されている、説明の目的で付加された代表的な外部回路成分である任意適当な振幅変調交流信号源34が、入力導線28´と接地用接続線13´によつて接続されていることが認められ、この点からみれば、入力導線28と接地用接続線13´とは、右信号源34からの交流信号を受けて、すなわち受信して、これを整流器14´、15´に供給する、すなわち入力させるものであり、したがつて、両導線28´、13´を、振幅変調信号源34の交流信号を「受信するための入力回路」ということができる。
なお、右両導線28´、13´を「受信するための入力回路」とみることが困難であるとしても、同号証によれば、マルチデバイス回路に入力した交流信号は、整流器14´、15´により整流、検波されて、交流信号の変調包絡線に相当する信号に変換され(6欄七ないし一一行。訳文一〇頁二ないし五行参照)、コンデンサ18´、抵抗30、31´により濾波され、さらにトランジスタにより増幅されて、外部に接続されている適当な負荷35に供給される(6欄七ないし五〇行。訳文一〇頁二行ないし一二頁三行参照)ことが認められるから、マルチデバイス回路に入力した交流信号、したがつて任意適当な振幅変調交流信号源34の交流信号とは、多数の異なる周波数の振幅変調交流信号を含むものではなく、これらの中から選択分離された特定の周波数の振幅変調交流信号であるとみられ、また、右交流信号源34は、第五図においては、前記のとおり、説明のために代表的な外部回路素子として付加されたものであるから、単独に振幅変調交流信号の発生源として存在しているとみるよりは、多数の周波数の振幅変調交流信号の中から任意の特定周波数の振幅変調交流信号を選択分離して、これを導線28´、13´を介してマルチデバイス回路に供給するための回路を代表して示しているとみるのが自然であり、したがつて、第五図においては、振幅変調信号源34を、特定の周波数の振幅変調交流信号を「受信するための入力回路」とみることができる。
そして、右振幅変調交流信号が、ベースバンド信号で変調された高周波搬送信号であることは、原告も認めている(請求の原因四の1の(二)の(1))ことである。
したがつて、第二引用例には「ベースバンド信号で変調された高周波信号を受信するための入力回路」が開示されているとするのが相当であるから、原告の右主張は理由がない。
(2) 原告は、また、第二引用例には復調回路が「受信するための入力回路に直流結合されている」ことの明示もない旨主張するので、これについて検討する。
前記甲第五号証によれば、第二引用例の第五図においては、振幅変調交流信号源34が、単に導線28´13´により、整流器14´、15´コンデンサ18´、抵抗30´、31´より成る復調回路に接続されていることが認められるものの、前認定のとおり、第五図において点線で示されるものは、説明の目的で付加された代表的な外部回路素子を表わしているにすぎないから、第五図は、振幅変調交流信号源34と復調回路とを直流結合することについてまでも示しているとは認められず、したがつて、同図により右の両者が直流結合されていると認めることができる訳ではない。
しかし、本願発明は「受信するための入力回路」を他の回路(第一の信号増幅回路)に対して「直流結合」することを要件としたものではないから、仮に審決が、第二引用例における「受信するための入力回路」と「復調回路」との結合関係について誤認があつたとしても、これが審決の結論に影響を及ぼすことはなく、したがつて、原告の右主張は、審決を取り消すべき事由とすることはできない。
以上のとおりであるから、審決には、第二引用例の記載事項について審決の結論に影響を及ぼすべき誤認はないといわなければならない。
2 本願発明と各引用例との相違点の看過の主張について
(一) 第二引用例との相違点に関する主張(取消事由<3>)について
原告は、審決は本願発明と第二引用例記載のものとの相違点(C)、(D)及び(E)を看過した旨主張するので、これらの点について検討する。
まず、相違点(C)については、前示のとおり、第二引用例には、ベースバンド信号で変調された高周波搬送信号を受信するための入力回路について開示されていると認められるから、右(C)を本願発明と第二引用例記載のものとの相違点ということはできない。
つぎに、相違点(D)及び(E)については、前記審決の理由の要点によれば、審決は、本願発明と第二引用例記載のものとを対比して、本願発明が復調回路の前段に増幅回路を直流結合したものである点を相違点(A)として挙示しており、この増幅回路とは第一の信号増幅回路を指していることは明らかであるから、相違点(D)及び(E)は、結局のところ、相違点(E)に集約されるべきものであるところ、審決が、相違点(A)として挙示した復調器の前段に直流結合された増幅回路、すなわち第一の信号増幅回路が、単一の集積回路装置上に形成されている復調回路とこれに直流結合された第二の信号増幅回路とともに右単一の集積回路装置上に形成されたものである点を、特に相違点として直接的には挙示していないことも明らかである。
しかしながら、右審決の理由の要点によれば、審決は、相違点(A)の判断において、右増幅回路を復調回路に直結させた集積回路装置について言及しているところ、第二引用例において、復調回路とこれに直流結合されたベースバンド信号を増幅するための増幅回路が単一の集積回路装置に結合されていることは前記甲第五号証により明らかであるから、審決の右言及は、結局、第一の信号増幅回路と復調回路並びに第二の信号増幅回路とが単一の集積回路装置上において直流結合されて形成されている点(これは、原告主張の相違点(E)に相当することは明らかである。)について言及しているに等しく、したがつて、審決が挙示した相違点(A)は、実質的には原告主張の相違点(E)を含んでいると認めるのが相当であるから、審決には、相違点(E)についての看過はないとすべきものであり、結局、原告の右主張は失当としなければならない。
(二) 第一引用例との相違点に関する主張(取消事由<4>)について
原告は、審決が本願発明と第一引用例記載のものとの相違点(a)、(b)及び(c)を看過した旨主張するが、右主張は、本願発明と第一引用例記載のものとを単に比較したにすぎないものであつて、審決を取り消すべき事由として意味のあるものではない。
すなわち、前記審決の理由の要点によれば、審決は、第一引用例にはその摘示のとおりの信号処理装置が開示されているとしながらも、本願発明と第二引用例記載のものとの相違点(A)である「復調回路の前段にそれぞれが直流結合された複数の増幅段を有する増幅回路を備え、この増幅回路と復調回路とは直流結合されていること」について、第一引用例の記載事項を引用していることが、その相違点(A)についての判断から明らかであり、前記甲第四、五号証を対比すれば、第一引用例記載のものは、第二引用例記載のものと、回路構成そのものが、入力したベースバンド信号で変調された高周波搬送信号から右ベースバンド信号を復調する回路である点で共通するものであることが明らかであるから、仮に、本願発明と第一引用例記載のものとの間に原告主張のような相違点があるとしても、これによつて、右相違点(A)に対して、第一引用例記載のものの、変調された高周波搬送信号を増幅するための、それぞれが直流結合され複数の増幅段を含む第一の増幅回路が復調回路に直流結合されたものである点を引用することに、何の妨げにもなるものではなく、したがつて、原告の右主張は理由がない。
なお、前記甲第三号証及び甲第五号証によれば、本願発明と第二引用例記載のものとは、いずれも集積回路装置であつて、両者の相違は、集積回路装置そのものに関してあるのではなく、集積回路装置として具現化されている回路構成そのものにあることは、審決が相違点(A)として挙示したとおりであることが認められ、審決が、右相違点とする回路構成(復調回路の前段に増幅回路を直流結合すること)は第一引用例に記載されているとするのであつて、集積回路装置そのものの相違点が第一引用例に記載されているとするものではないことは前記審決の理由の要点から明らかであるから、本願発明と第二引用例記載のものとの相違点をことさらに集積回路の相違にあるとする原告の右主張は採用できない。
3 認定した相違点についての判断の誤りの主張について
(一) 相違点(A)に関する主張(取消事由<5>)について
(1) 「第一引用例の記載事項を前提とした判断の誤りについて」の原告の主張は、前記2の(二)記載のとおり、第一引用例の記載事項のうち、審決が引用した点以外に関するものであるから、審決を取り消すべき事由として採用することはできない。
原告は、第二引用例の信号源の代わりに第一引用例の多段直結増幅段を置換することはできず、また、仮に置換したとしても、本願発明のような装置にはならない旨主張するが、前記審決の理由の要点によれば、審決は、本願発明と第二引用例記載のものとの相違点として、復調回路の前段に、それぞれが直流結合された複数の増幅段を有する増幅回路を備え、この増幅回路と復調回路は直流結合されている点を挙げ、これに対して第一引用例記載の復調回路の前段に直流結合された多段直結増幅器を引用しているのであつて、第二引用例の信号源の代わりに第一引用例の多段直結増幅回路を置換したとの認定をしているものではないことが明らかであるから、原告の前記主張は、審決の判断とは関係のないことで、審決を取り消すべき理由にはならず、したがつて、原告の右主張は失当といわなければならない。
(2) 次に、「第二引用例の記載事項を前提とした判断について」の原告の主張について考えるに、第二引用例に、ベースバンド信号で変調された高周波搬送信号を受信するための入力回路が開示されていること、本願発明は入力回路を他の回路(第一の信号増幅回路)に対して直流結合することを要件とするものではないから、第二引用例において入力回路と復調回路との結合関係が直流結合であるか否かは審決の結論に影響を及ぼすものではないこと及び第一引用例に「受信するための入力回路」が開示されていることは、いずれも前記のとおりであるから、これらが開示されていないことを前提とする原告の右主張は理由がない。
前記審決の理由の要点によれば、審決は、本願発明と第二引用例記載のものとの相違点(A)についての判断においては、第二引用例記載のものの復調回路の前段に、それぞれが直流結合された増幅段から成る増幅回路を直流結合することに対しては第一引用例の記載事項を引用し、また、この増幅回路を、復調回路とともに集積回路装置に形成させることに対しては、第二引用例の記載事項(甲第五号証6欄五〇ないし五六行。訳文一二頁三ないし九行)を引用して、これらのことは当業者の必要により容易になしうる程度のこととしたものであることは明らかであり、右の判断にはなんら違法の点はない。
原告は、第二引用例の右記載は、具体的な構成を特定して示すものでもなく、本願発明の構成をなんら示すものではない旨主張するが、前記審決の理由の要点に前記甲第四、五号証の記載を合わせ考えれば、審決は、本願発明の特定の構成(復調回路の前段に第一の信号増幅回路を直流結合した構成)に関しては第一引用例の記載事項を引用したもので、第二引用例の右記載事項を引用している訳ではなく、第二引用例の右記載事項が、第三ないし第五図に示されるような簡単な回路に限らず、もつと複雑な回路であつても、これを単一の集積回路装置とすることの可能性を示している点をとらえて、第一引用例に記載のものの第一の信号増幅回路を、第二引用例に記載のものの復調回路の前段に直流結合するに際して、これらを単一の集積回路装置に形成することに関して、第二引用例の右記載事項を引用しているにすぎないことは明らかであるから、原告の右主張は理由がない。
原告は、審決が回路の組合せのみを抽象化して判断したとして、審決の判断を非難するが、審決は前示のとおり、原告の主張する具体的な回路装置の構成が第一引用例及び第二引用例の記載事項から容易に推考できると判断しているのであるから、原告の右主張は採用できない。
(二) 相違点(B)に関する主張(取消事由<6>)について
原告が相違点(B)に関して主張するところは、結局相違点(E)に関する主張と同一に帰するものであることが明らかであるところ、相違点(E)に関する主張の理由がないことは前示のとおりであるから、右(B)に関する主張も理由がないといわなければならない。
以上のとおりであるから、原告主張の審決取消事由はいずれも理由がなく、審決には、これを取り消すべき違法の点はないというべきである。
三 よつて、審決の取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。
〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。
<1>搬送信号よりも低い周波数のベースバンド信号で変調された右の高周波搬送信号を受信するための入力回路と、
<2>該入力回路に結合されており前記変調された高周波搬送信号を増幅するための直流結合された複数の増幅段を含む第一の信号増幅回路と、
<3>該第一の信号増幅回路の出力に直流結合されており前記ベースバンド信号を再生するための復調回路と、
<4>該復調回路の出力に直流結合されており前記ベースバンド信号を処理するための第二の信号増幅回路と、
<5>該第二の信号増幅回路の出力に結合されていて前記ベースバンド信号を利用するための利用回路とからなり、
<6>前記高周波搬送信号及び前記低い周波数のベースバンド信号をそれぞれ増幅するための前記第一及び第二の増幅器は共通の集積回路装置上に形成されており、
<7>前記復調回路は前記集積回路装置上に形成された素子と前記集積回路装置に外付けされたリアクテイブ素子とを含み、
<8>これによつて単一の集積回路装置が一連の直流結合された回路中で前記の変調された高周波搬送信号の増幅、変調された搬送信号の復調及び低い周波数のベースバンド信号の処理からなる多機能を遂行するために使用される回路成分を備えている信号処理装置。